韓国語をあらわす「ハングル」

「ハングル(ハン=偉大な、クル=文字)」とは、韓国語・朝鮮語を表記するための文字のことです。日本語で言うところの「ひらがな・カタカナ」にあたるため、しばしば耳にする「ハングル語」という言い方は、実際には使用しません。

「ハングルの日」(10月9日)は、ハングルを公布した世宗(セジョン)大王の功績を称え、ハングルの普及・研究を奨励する日と定められています。韓国では、建国記念日である開天節(10月3日)からハングルの日までの約1週間は、「ハングル週間」として各地でさまざまなイベントが催されます。科学性・独創性の高さなどハングルに対する国際的な評価の高まりを受けて、2013年から、「ハングルの日」が23年ぶりに祝日として復活。日本人の韓国語に対する関心も年々高まっています。言葉を知れば、旅行でも便利なだけでなく、韓国に対する理解を深めることもできるでしょう。 韓国語の基本となる、朝鮮半島固有の文字「ハングル」の歴史をご紹介します。

ハングルの創製者 世宗大王

韓国人で知らない者はいない、朝鮮王朝(1392-1910)第4代王の世宗(セジョン、1397-1450)。ハングル創製をはじめとする数々の科学的業績から、「聖君(ソングン)」「大王(テワン)」とも称される、韓国で最も尊敬される歴史的人物の1人で、1万ウォン札の肖像にもなっています。

 

幼い頃から類まれな読書家として知られ、様々な学問に長けていただけでなく、分析・批評まで行なう専門家並みの博識家だったとされます。三男でありながら弱冠22歳で即位。「백성은 나라의 근본이니 근본이 튼튼해야 나라가 평안하게 된다(民は国の根であり、根がしっかりしていてこそ平安な国となる)」という言葉で知られ、日時計や水時計、測雨器、天体観測器など、民衆の生活に役立つ発明を次々と主導し、韓国の歴史上もっとも優れた儒教政治と華やかな民族文化を花開かせたとされます。

ハングルが誕生した背景

ハングルができる前の韓国では、韓国語と言語体型が異なる中国の漢字が使われていました。しかしこの漢字を理解できるのは高級官吏や学校に通えるお金持ちなど、支配層のみ。一般庶民は書くことはおろか読むこともままならなかったといいます。世宗大王は、民衆にも分かりやすい独自の文字を作るため、当時の有名な学者たちを集めハングルを作り上げ、1446年10月9日に大々的に公布しました。これによって、それまでの漢字語ではない、朝鮮語の正確な表記ができるようになりました。

 

ハングルの発展と現在

しかしハングルは、朝鮮王朝時代には漢文の補助的存在「諺文(オンムン)」と軽視され続けました。1894年に、最後の王・高宗(コジョン、1852-1919)の勅令によってハングルがようやく国字化されますが、当初は漢字語と組み合わせて使用されました。

「ハングル(偉大な文字の意)」という名称は、言語を弾圧された日本植民地時代に、韓国語学者たちによって生まれ定着したとされます。初めて使ったのは韓国語学者であり独立運動家でもあった周時経(チュ・シギョン、1876-1914)。なお、韓国語学者の多くは彼の弟子から出るようになったと言われます。植民地解放後も、古い文献や新聞にはハングルと漢字の混用が多く見られますが、1970年に大統領令により「ハングルの日」が制定。1980年代からは漢字教育が奨励されなくなり、韓国はハングル中心へと変化していきます。

1990年代以降に普及したパソコンのキーボードはハングルとアルファベットが基本で、漢字は一字ごとに変換キーを押す程度の使用頻度です。また、文書作成のソフトウェアも「アレ・ハングル」が韓国市場の約80%を占めるとされます。

出典:konest